埼玉県和光市の及川社会保険労務士事務所

トーコロ事件working-hours-3

(東京高判平成9年11月17日)
時間外労働命令に従わないという理由の解雇の有効性は?

【概要】
 XはY社の従業員で業務に就いていた。
平成3年9月末、残業をするよう指示されXも10月初旬ころから、毎日30分から105分程度残業するようになっていた。
繁忙期にはいり上司がXに何度か残業時間を延長するように求めたが、Xはこれに従わなかった。そのため会社はさらに上の上司の名前で残業命令を発した。
その後Xは、翌年2月に眼精疲労であるという医師の診断書を提出し、業務の変更はないまま定時にて帰宅するようになっていた。
 Y社は、Xに対し自己都合退職を勧告したが、Xがこれを拒否すると、解雇する旨を告げた。
そこでXは本件解雇は無効であるとして訴えをおこした。

【判旨】
 本件に関しては、時間外労働の命令の根拠として“三六協定”が提出されていたが、当協定の当事者は、Y社と「労働者の過半数を代表とする者」として「営業部A」であり、“全員の話し合いで決定”されていた。
「労働者の過半数を代表する者」は事業所の労働者より選ばなければならないが、適法な選出と言えるには、労働者にとって選出される者が労働者の過半数を代表として三六協定を締結することの適否を判断する機会が与えられ、かつ、事業所の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続きがとられていることが必要であるべきといえる。
Aは全従業員が加入している「友の会」の代表者だが、「友の会」は会員親睦を目的とする親睦団体で、労働組合ではない。
したがって、「友の会」の代表であるということで選出された今回の件では、Aを「労働者の過半数を代表する者」とはいえないし、Aが民主的に選出されたという証拠も無い為、本件三六協定は無効と言える。

三六協定が無効なのであれば時間外の残業の命令も無効となる為、本件解雇も無効であるといえる。

【解説】
今回の判例は残業命令に従わなかった労働者の解雇についてです。
解雇の無効が争いになった場合、“会社の一方的な主張”で解雇権を乱用した、ということを証明し解雇は無効であると主張されることが多いと感じます。
ですが、今回の案件に関していえば“三六協定の有効性”を否定し解雇は無効だと判じられた判例です。
「三六協定」とは時間外の勤務(8時間を超えて勤務)をさせる為に労働組合(無い場合は過半数労働者の代表者)と労使協定を結び、労働基準監督署に提出するもので、労働基準法にて提出が義務付けられているものです。
これを正しく作成し提出しておかないと、8時間を超えた労働をさせることができないばかりか、労働基準法違反として罰せられてしまう可能性も出てきてしまいます。
また、この協定を締結する際の“代表者”を選ぶ際に以下の二つを気を付けなければなりません。

1,管理監督者でない
2,代表者を選出する際は選出することを明示し挙手等の方法で選ぶ

この二つを守ることで代表者として認められるのですが、現実は会社から指名される場合や、労働組合の様な会社の中で設立されている組織の代表が兼任することが多いと思います。
そういった場合だと、今回のように代表者が不適当に決められたとして“三六協定”自体が無効とされ、残業命令が無効とされてしまう場合もあります。
代表を選出する場合は、法律上に決められているルールを守って決定するようにしてください。

残業をするのは、会社で働いている以上当たり前だと考えられていますが、法的に残業をさせるように命じるためには、就業規則に定めるだけでは残業を命じることができますが法律違反であり、三六協定だけでは残業を強制できないと、法律に沿った運用にをするためには手順が必要となっております。
一度、会社の就業規則や労務関係の書類を確認し、正しく整えられているかを見てみてください。
もし、不明点などありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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